所有者不明土地とは
所有者不明土地は、最近、社会的問題になっています。
また最近は、国会論戦もありました。
調査したところ、所有者不明土地の面積は、九州の面積を超えるということです。
なぜ土地建物が所有者不明になるのか
では、土地建物がなぜ所有者不明になるのでしょうか?
過疎地にあるとか山林とかで、財産的な価値や利用価値が低い土地建物の所有者が亡くなった場合に、本来は相続登記をしなければなりません。
しかし、相続登記を行うのも、費用が掛かります。
さらに、所有していても固定資産税等の維持費がかかるため、遺族間でそれらの土地建物の押し付け合いになることもあります。
そのため、相続登記をしないまま放置されてしまいます。
こういった土地建物のうち、相続人が散在してしまって、きわめて多数になったり、あるいはまったく不存在の場合もあります。
地域で土地建物が放置されていて、誰に聞いても所有者が分からず、市役所から固定資産税の納付書を送っても返送されてしまう、という事態も発生しています。
こういう土地建物になりますと、放置されたままですので、地域に悪影響を及ぼします。
それで、行政代執行で解体するにしても、その費用の請求先が分からないということになります。
建物解体後の土地を競売して解体費用を回収するにしても、債務者名義が不明ということになってしまいます。
所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法及び民法の改正について
この所有者不明土地について、平成30年6月6日に「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」が成立し、同法は令和元年6月1日に全面施行されました。
まず、自治体の土地取得の部署が、固定資産税の納付の情報を使えるようにして、公共事業等が円滑に進むようにする、ということがあります。
また、NPO法人などが、特定所有者不明土地を、地域住民等の福祉や利便の増進のために利用しようとするときは、都道府県知事に対し、特定所有者不明土地の使用についての裁定を申請することができます。
この申請は、NPO法人の他、民間企業や自治会、町内会などどなたでも行うことができます。
その他、法務省管轄の手続として、登記官が,所有権の登記名義人の死亡後長期間にわたり相続登記がされていない土地について,亡くなった方の法定相続人等を探索した上で,職権で,長期間相続登記未了である旨等を登記に付記し,法定相続人等に登記手続を直接促すなどの不動産登記法の特例が設けられました。
また、民法第二編物件第三章所有権のうち、第四節として、第264条の2以下で、所有者不明土地管理命令及び所有者不明建物管理命令の節が追加され、利害関係人が裁判所に請求することにより、所有者不明土地(建物)管理を命ずる処分を出してもらうことができます。
同様に、第五節として、第264条の9以下で、管理不全土地(建物)管理命令として、利害関係人の請求により、当該土地(建物)を対象にして、管理不全土地(建物)管理人による管理を命ずる処分ができることになりました。
したがって、これらの利害関係人となれば、所有者不明土地建物を管理することができるようになっています。
不動産所有者がいない場合の手続
さて、具体的には、相続人全員が、こんな田舎のぼろい空き家はいらないということで、相続放棄する場合もあります。
また相続人そのものが存在しないという場合もあります。
その場合の手続きは、具体的には家庭裁判所に対して、相続財産管理人選任という手続をとることになります。
最終的には国庫に帰属ということになりますが、特別縁故者に財産分与がなされる場合もあります。
つまり、所有者不明土地建物を取得したいという場合、NPO法人等を作ってしまうか、または特別縁故者にどうやって入っていくか、ということになろうかと思います。
なお、空き家の所有者特定フローが、ネットに掲載されています。
https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/kenchikujyuutakuka/akiyamanyuaru2_d/fil/05.pdf
または、当職にご相談いただく、ということになります。