空家空地活用協会の blog

空家、空地の活用を通して地域の活性化を図ります

要らない土地建物を捨てる方法について

<h2>相続土地国庫帰属制度のポイントについて<h2>
まず今回の法改正によって相続土地国庫帰属制度ができましたので、その概要についてです。
相続等によって土地の所有権または共有持分を取得した者等は、法務大臣、法務局に対して、その土地の所有権を国庫に帰属させるという申請をすることができます。
その場合法務局は、承認の審査をするために、必要と判断したときは調査をすることができます。
そして、承認申請された土地が、通常の管理や処分をするよりも多くに費用や労力がかかる土地には当たらないと判断した時は、土地の所有権の国庫への帰属について承認をします。
つまり国家の土地になる、というわけですね。
そして、土地の所有権の国庫への帰属の承認を受けた方が、一定の負担金を国に納付した時点で、土地の所有権が国庫に帰属する、という流れになります。
この一定の負担金ですが、法務局による調査の結果、申請者が10年分の土地管理費相当額の負担金を納付する、ということになります。

<h2>申請できる人<h2>
次に申請できる人です。
相続又は相続人に対する遺贈によって土地を取得した人が申請できます。
相続以外の原因、たとえば売買などにより自ら土地を取得した方や、相続等により土地を取得することができない法人は、基本的にこの制度を使うことはできません。

<h2>対象の土地について<h2>
対象になる土地についてです。
相続または相続を原因とする遺贈によって、自分の意思にかかわらず取得した土地で、これはこの制度の施行前に相続した土地も対象となります。
先にも述べた通り、売買や贈与等で取得した土地については、対象になりません。
なお、共有の土地については、共有者の一人が売買等により共有持分を取得していても、他の共有者が相続などにより共有持分を取得している場合は、共有者全員が共同して申請して、この制度を使うことができます。

<h2>申請先について<h2>
申請先は、帰属させる土地を管轄する法務局・地方法務局(本局)の不動産登記部門になります。
法務局・地方法務局の支局、出張所では、承認申請の受付はできませんのでご注意ください。

<h2>引き取ることができない場合について<h2>
申請が却下される場合は、以下の通りです。
1.建物がある場合
2.担保権や使用収益が設定されている場合
3.他人の利用が予定されている場合
4.土壌汚染されている場合
5.境界が明らかではないか、所有権の存否や範囲に争いがある場合
また承認を受けることができない土地は、以下のとおりです。
1.一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる場合
2.土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある場合
3.土地の管理・処分のために除去しなければならない有体物が地下にある場合
4.隣接する土地の所有者等の争訟によらなければ管理・処分できない場合
5.その他、通常の管理・処分にあたって過分な費用・労力がかかる場合

その他、詳細については法務省で下記の資料が作られていますので、参照ください。

https://www.moj.go.jp/content/001390195.pdf

<h2>当事務所でできること<h2>
当事務所では、上記の相続土地国庫帰属制度の申請の他、該当しない土地・建物についても、引き取りを行っております。
気軽にお問い合わせください。

要らない土地建物を捨てる方法について、どうしたらよいのかわからない場合は、当職においても相談を受け付けております。
また、相続土地国庫帰属申請代理も、当職において依頼を受け付けております。
またお気軽にお問い合わせください。

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 tokaihorei@nifty.com

 

固定資産税の決定方法と調査方法について

例えばマイホームを買うのでも、月々のローンや管理費だけが必要というわけではありません。
固定資産税がかかってきます。
空き家を空けておいても、固定資産税はかかります。
それで今回は、固定資産税の決定方法と調査方法について記載していきたいと思います。

<h2>そもそも固定資産税とは</h2>
住宅や土地などを所有すると、不動産ごとに固定資産税を毎年支払わなければいけません。
課税される対象者は、毎年1月1日時点で、その不動産の所有者になります。
納税通知書は、納付時期の前である4-6月ごろに、自治体から所有権者に送られてきます。
また、固定資産税は一括で払うこともできますが、年4回に分けて納付することもできます。

<h2>固定資産税評価額について</h2>
固定資産税を計算する際に使用するものが、固定資産税評価額です。
そしてその評価額は、総務大臣が基準や評価などについて定めた固定資産評価基準をもとに決まります。
固定資産評価基準とは、地方税法の規定によって総務大臣が定めた土地と家屋、償却資産別にそれぞれどう評価するかの基準を定めたものです。
それによって定めた評価額×1.4%を、固定資産税額とします。
たとえ同じ広さの建物であっても、評価額はそれぞれ異なるため、固定資産税額も異なってきます。
ちなみに固定資産税評価額は市場価格と連動しているわけではないので、売買価格の参考にすることはできません。
あくまでも、固定資産税、不動産取得税などを算出する基準、ということです。
ただし、公示価格の70%が固定資産税評価額の目安にはなります。
それを逆算すれば、売買価格の参考とはなります。
また、固定資産税評価額は市町村が決めており、見直しが3年ごとになります。
その基準年の1月1日に見直しをしています。
ただし、新築や増築があった土地は、その翌年度に見直しがなされています。
見直し年ですが、2015年、2018年、2021年、2024年、2027年と続いていきます。

<h2>固定資産税評価額を調べる方法</h2>
固定資産税評価額が分かっていると、納める税額を事前に把握することができます。
毎年役所から送られてくる納税通知書ですが、それと一緒に課税明細書が添付されています。
その課税明細書にある価格という項目に、固定資産税評価額の記載があるので、そこで調べることができます。
また、総務省管轄機関である財団法人資産評価システム研究センターが運営している全国地価マップというサイトがあります。
全国地価マップ(link)
そこから、固定資産税路線価等、相続税路線価等、また地価公示・地価調査を見ることができます。
その固定資産税路線価等に土地の形による補正率と面積を掛けることで、固定資産税評価額を算出することができます。
そういう価格を調べることで、売却でも購入でも、だいたいの相場を掴むことができます。

<h2>固定資産税の算出の方法</h2>
固定資産税評価額が分かると、固定資産税や都市計画税、不動産取得税、登録免許税の算出も可能です。
固定資産税:固定資産税評価額×1.4%
都市計画税:固定資産税評価額×0.3%
不動産取得税:固定資産税評価額×4%
登録免許税(土地の所有権移転登記):固定資産税評価額×2%(令和3年3月31日まで1.5%)
なお、土地に住宅が建っている場合、住宅用地の特例が適用されて固定資産税と都市計画税が軽減されます。
小規模住宅用地200㎡以下ですと、固定資産税は1/6、都市計画税は1/3となります。
そのため、空き家が取り壊されないまま長く残ってしまう原因にもなっています。
また最近は、インバウンド需要などで、固定資産税評価額が急に上がる場合がありますが、負担調整措置によって徐々に税金が高くなるので、いきなり負担が大きく増すことはありません。

空き家の固定資産税額を知りたい場合や、空き家の活用について、どうしたらよいのかわからない場合は、当職においても相談を受け付けております。
またお気軽にお問い合わせください。

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山林の活用について

いきなり山林を相続する場合があります。
相続があって初めて、相続財産に山林があることに気が付く場合も多くあります。
その場合でも、山林だけ相続放棄することもできないため、仕方なく相続することも多いようです。
現在の山林を取り巻く状況は、良くありません。
どうやって山林を活用することができるでしょうか?

<h2>立木を資源とみる場合</h2>
山林にある立木を処分して利益を得るという方法はあります。
山林の流木は独立して価値を持っており、立木を処分しても土地は残ります。
しかし現在、林業専門の林家であっても、木材販売で生計を立てているケースは、全体の5%ということです。
そのため、相続で山林を相続した林業の素人が、立木で利益を出して生計を立てるというのは、まずありえないことと言えます。
よく山間部を車やバイクや自転車で走ると、明るい山林と暗い山林があることに気が付きます。
明るい山林は、下層の枝を切り払う枝打ちがなされ、不要な樹木を取り除く除伐、間伐がなされて、その結果、適度な間隔で真っすぐ伸びています。
一方、枝打ちや除伐、間伐がなされていない山林は、薄暗くなります。
薄暗い山林の原木は、本数が多くても枝が節になり、細く曲がって質が悪く、山林全体が不健康になって、価値を落とします。
それで、山林は定期的に間伐などの手間をかけないと、木材販売収入が極めて少なくなってしまいます。
さらに、森林・林業白書において、スギ人工林において、50年生での販売収入は試算87万円/haに対し、50年生までの経費は平均121万円/haとなりまして、大赤字となります。
採算を取りにくい事業であると言えます。
また、木は木材としてだけでなく、燃料としての役割があり、薪ストーブ以外にも、薪や炭をアウトドアの時の火力にしたり、窯業でも窯に火をくべるのも薪です。
しかし、これらの用途では、原木を加工してもらわねばならず、加工費を払って販売して、果たして採算が取れるのかという問題もあります。
最近は薪ストーブは人気があるようで、ネット活用で販売コストは下がります。
しかし、木材育成の赤字+加工費をプラスにするだけの販売量を確保するのは、大規模に行わないと無理そうです。
ただし、相続した山林で薪や炭にするのは、すでにある立木を使うということで、育成コストがなく、木材にならない立木の用途としては有効かもしれません。

<h2>自然としてとらえる場合</h2>
山林の動植物や景観、環境を目的として、他者に訪れてもらったり、生産物を商品にしたりという活用もあります。
林業による生産額の半分は、木材以外の林産物が占めています。
木材以外の林産物の中で、8割を占めるのが、きのこ類です。
その他にも、山菜やタケノコなどの林産物があります。
また、果物や木の実類、きれいな沢があればわさびやクレソンがあり、昆虫でもカブトムシやクワガタも子供たちに人気です。
いずれにしても、何らかの収穫物が得られるような環境が必要となります。
さて、他の人の山に入って、きのこや山菜を取るのは、山林の所有者の許可がなければ、厳密には他人の所有物を無断で採集している窃盗行為になります。
しかし、一般的にこれらの行為は、個人で楽しむレベルでは許容・黙認されており、趣味として市民権を得ています。
ただ、山林の所有者から許可を得て、気兼ねなく取りたいと思っている人もいます。
それで、体験ツアーを企画して、ガイドを同行させて、それらの行為を行ってもらうということができます。
周辺に大都市等があると、それなりに企画もされているようです。

<h2>レクレーション用地として</h2>
地域住民などの来訪者が山林に来て、リラックスして楽しめる場として使ってもらうことができます。
これは、地元の自治体など、公益性の高い組織(学校や自治会・町内会を含む)を対象とします。
公益性の高い組織は、基本的に無償で解放または使用するため、収益を上げる方法としては適しませんが、地域貢献にはなります。
加えて、簡易な管理をしてもらえる可能性もあります。
利益を出すなら、キャンプ場やアスレチック施設を設置したり、コテージ設置などで、利用料を得るという方法があります。
さらに、日本全国に、「森林ボランティア」と呼ばれるNPO法人や市民団体があります。
この森林ボランティアは、自主的に森林整備を行い、健康な森林づくりを目指すグループです。
そして、地域の森林を活動拠点にしています。
森林ボランティアの多くは、国土緑化推進機構という社団法人に登録されています。

https://www.green.or.jp/


ボランティア活動ですので、採算はとれませんが、活動拠点に提供して山林を見てもらうのも1つの方法といえます。

山林の管理や活用について、どうしたらよいのかわからない場合は、当職においても相談を受け付けております。
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山林の売買について

日本の山林の58%は私有地となっています。
それらの山林は相続され、子の代、孫の代と受け継がれていきます。
しかし、それらの山林は二束三文の価値しかなく、相続登記もせずに放置するということになります。
相続人が50名、100名などと膨れ上がることもあります。
固定資産税も安いとはいえかかってくるわけで、いずれ売却をして税負担等の重荷から解放されたいと思うかもしれません。
山林は農地と違い特別な許可は必要なく、買い手がいれば不動産売買としての手続になります。
そして、山林売買専門の会社まで存在します。
それで、これから山林の売買について見ていきます。

<h2>山林売買の問題点について</h2>
山林はおおむね広大で価格は安いです。
それで、いろんな問題が生じてきます。
以下にそれらについて挙げていきます。
1.公募面積と実測面積の違いがあること。
2.売買市場が成熟していないこと。
3.山林相場が不安定であること。
まず1.について。公簿面積と実測面積とは、食い違っていることも多くあります。
それで、通常の宅地売買については、実測を測量し、境界を確定して売買しています。
しかし山林は、広大であるために、測量に膨大な費用がかかります。
また隣地の所有者との境界を明確にするのも不経済な状態となります。
それで、山林では公募面積で売買されるのが通例となっています。
2.について。売主や買主が少なく、山林売買の市場が成熟していません。
市場規模が小さいということになるので、売ろうとしても買主が見つからない可能性があり、簡単に売ることができません。
3.については、取引が少ないために相場が形成されにくく、売買価格は当事者次第となります。
山林を持て余していて、どうしても売りたいという側の方が、買いたい側の価格交渉に屈してしまうということもあり得ます。

<h2>山林売買傾向と斡旋サービスについて</h2>
山林の需要や市場が小さく、相場の把握は困難ですが、山林の属する地域により、売買の傾向はあります。
市街地から近い順に、都市近郊林地、農村林地、林業本場林地、山村奥地林地という分類になります。
売買価格も、1のように市街地に近いほど高く、遠ざかるほど安くなります。
また、市街地に近い林地は、買主も個人に限らず投資目的の法人も参入します。
さらに、都市計画区域での分け方として、市街化区域、市街化調整区域、非線引き区域/準都市計画区域都市計画区域外、という分け方もあります。
市街化調整区域までは投資目的の法人も参入しますが、都市計画区域外となりますと、林業目的の法人や、使途不明の個人での購入ということになります。
また、外国人が日本の山林に投資するという動きもあり、さらに、仲介業者や転売目的の業者に対して売ることもできます。
また、斡旋サービスですが、全国にある森林組合(もしくは森林組合連合会)の中には、斡旋サービスをしている組合もあって、山林売買のマッチングをしてくれます。
そういった森林組合の斡旋サービスは、全国的な規模ではなく、管理下にある地域の山林を取り扱っていますが、閲覧する人もいますので、一定の効果はあります。
他にも、山林バンクというページがあり、山林売買の仲介をしてくれます。

sanrinbank.jp


ここでは、山林に特化して、売買を扱っており、こういうページを活用することができます。
さらに、登録しなくても売りに出されている物件をみれば、実際の山林がどのくらいで取引されているか知ることもできますし、役に立つ情報を見出すこともできます。

<h2>山林売買の相場について</h2>
ほとんどの山林は、坪1,000円以下で取引されているということですが、地域により相場傾向や買主傾向には違いがあります。
ある程度の相場は分かりますが、参考程度ということです。
都市近郊林地は、最頻値1,000-4,999円/㎡、500円/㎡を超えると個人以外の買主が増えます。
農村林地は、半分以上が300円/㎡未満、高くても1,000円/㎡がほとんどで、買主は個人が多くなります。
林業本場林地は、100円/㎡未満、買主として安価な山林は個人が購入しています。
山村奥地林地は、100円/㎡未満が大半となっています。
買主ですが、300円/㎡(坪約1,000円)を境に個人と個人以外で分かれます。
個人では農村林地での購入が多くみられるということです。
都市計画区域で分けると、市街化調整区域では価格が高いため個人以外の取引が、個人では都市計画区域外での取引が見られます。

山林の管理や売買について、どうしたらよいのかわからない場合は、当職においても相談を受け付けております。
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借地権の空き家の朽廃について

借地権の上にある空き家も、放置しているとだんだん朽ちていきます。
これについても、単なる老朽化と朽廃と呼ばれる状態とに分かれます。
この2つの言葉の意味は異なってきます。
この2つの言葉は、は借地契約の建物明渡しにかかわる裁判などでは、契約存続について重要な意味合いを持ちます。
以下、おもに朽廃について考察していきます。

<h2>老朽化と朽廃について</h2>
老朽化とは、建物が経年劣化により、建物自体の性能や品質が落ちていく状態のことを指します。
つまり、人が居住することはまだ可能、ということになります。
一方、朽廃とは、空き家などの建物が、人工的にではなく、長年に渡り自然的な腐食状態によって、社会的経済的効用を失った状態で、人が住めない状態のことを指します。
具体的には建物の土台や柱などが破損し、壁等が剥落し、材料が腐食しているなどの場合をいいます。
旧借地法において、朽廃と認められた場合に、借地契約は終了してしまいます。
これは、旧借地法のみの制度であり、新法では、朽廃による借地権が消滅する制度はなくなりました。

<h2>老朽化・朽廃した借地権</h2>
よく、親の代からの借地権の空き家が老朽化したがどうしたらいいか、という相談があります。
その家を親の世代から使用していたという事もあり、すでに老朽化していることが多く、人が住んでいない状態だと、老朽化の進行は早くなります。
そのまま放置していると、躯体部分が腐ってしまって、朽廃状態となってしまいます。
朽廃してしまうと、借地権設定者つまり地主から借地権の存否を問われてしまいます。
その場合でも、借地権者と借地権設定者とで協議・交渉していくのですが、最悪のケースだと借地契約の解除につながる場合もあり得ます。
また、「空き家対策特別措置法」の特定空き家に認定されてしまうと、借地権者つまり建物の所有者宛てに通知が来ます。
この通知を行っても改善が見られない場合には、行政で強制的に撤去されてしまう可能性があり、解体費用は所有者あてに請求されます。

<h2>借地権の空き家を持っている人がとれる方法</h2>
では、借地権の上の空き家を持っている借地権者としてはどういう選択肢があるのでしょうか?
1.現況のまま売却する
2.リフォームや建替えして人に貸す
3.地主に借地権を返す
こういった方法を取ることができます。
まず、1.についてです。
現況のまま売ればそれまでですが、建て替えして売る場合もありえます。
その場合は、借地権設定者つまり地主さんに払う、建替え承諾料(更地価格の3%~5%程度)や、譲渡承諾料(更地価格の10%程度)の支払が発生することがあります。
また、建物と建替えるためにかかる費用として、取壊し費用・建替え費用等ざっと見積もっても、2000万以上かかる可能性もあります。
そして、借地権設定者との交渉も借地権者がしないといけません。
裁判所の代諾許可の制度もありますが、これもまた裁判手続となってしまいます。
次に2.についてです。
借地権の空き家を、軽微なリフォームだけする場合は、地主さんの承諾は必要ありません。
しかし、老朽化や朽廃した建物を大規模なリフォームや増改築をするとなれば、借地権設定者つまり地主さんの承諾が必要となります。
この借地権設定者に支払う承諾料は、交渉次第とはいえ、更地価格の3%~5%程度に達する可能性があります。
リフォームも建替えも、承諾料を含めると多額の費用が掛かります。
それを現金で賄えるという方は少ないのではないかと思います。
したがってローンを組むことになりますが、これも地主様のローン承諾をもらわないといけません。
このローン承諾についてもまた承諾料を支払うこともあり、地主さんによっては断られる可能性もありえます。、
また3.についてですが、借地権設定者つまり地主さんに借地権を返すというのも一つの方法としてはあります。
しかしその場合はほとんどの場合で、地主さんは更地にして返してくださいと言ってきます。
土地賃貸借契約書に「原状に復して返還するものとする」という条文をいれている場合が多く、更地にして返してくれと言ってくるのです。
通常の賃貸借契約において、借主には原状回復義務というのが生じます。
しかし、原状回復にも解体整地費用が掛かります。
逆を言えば、借地権を返さなければ原状回復費用は掛かりません。
そしてその借地権は、第三者にも売却が可能な権利です。
それで、借地権は、返すのではなくなるべく保持する方向で動くべきと言えます。

<h2>建て替えの時の注意について</h2>
借地上の建物が老朽化したなどの理由により建替えを行う場合には、借地権設定者つまり地主さんの建替え承諾が必要となります。
そして、その承諾には、建替承諾料を支払うことになります。
建替え承諾料については、一般的に更地価格の3〜5%程度が慣習となっているようです。
この建替え承諾を得ずに建替えてしまうと、借地契約を解除されてしまうなどトラブルのもとになります。
また、旧借地法においては、非堅固な建物から堅固な建物に建て替えてしまうと、借地契約の条件変更となります。
借地権の存続期間にも相違があります。
したがって、その際にも地主さんの承諾が必要となります。
承諾を得ないで無断で建替えを行ってしまうと、契約違反となり、借地契約を解除されてしまう可能性もあります。

親や先代からの借地権の空き家について、どうしたらよいのかわからない場合は、当職においても相談を受け付けております。
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市民農園の開設方法について

遊休農地を活用する方法として、農地として貸す方法や売る方法、また転用して、違う用途で使う方法があります。
しかし、いずれも農地法により制限されており、農地転用許可もなかなか下りないものとなっています。
それで、都市部の市民に農地を利用してもらい、対価を受け取ることができる方法として、市民農園が注目されています。
それでは以下に、市民農園にはどういった種類のものがあるのかを説明していきます。

<h2>市民農園の3つの開設方法について</h2>
市民農園の開設方法は、関係法令によって3つ存在します。
1.特定農地貸付法による方法
2.農園利用方式による方法(法律の規制はない)
3.市民農園整備促進法による方法
まず、1.については、市民に農地を貸し付ける市民農園で、賃料を受け取ることができます。
2.については、市民に農作業体験をしてもらう市民農園で、入園料を受け取ることができます。
3.について、休憩所、トイレ、駐車場、農機具倉庫など付帯施設がある市民農園になります。
市民に農地を貸し付ける方法と、農作業体験をしてもらう方法のどちらも可能です。
これらはいずれも、農地を市民に貸し付けるか、農作業体験をしてもらうかで分類されます。
さらに、付帯設備があるかどうかによっても異なってきます。
以下さらに詳細に見ていきます。

<h2>特定農地貸付法による方法について</h2>
これは、農地を小さく区画して、市民に貸し付けることで賃料を受け取る方法です。
この市民農園の開設には、農業委員会の承認が必要になります。
その貸し付け条件としては、下記の通りです。
1.広さは10a未満で相当数が定型的な条件で行うこと。
2.営利を目的とした栽培ではないこと
3.貸付期間が5年以内であること
まず1.についてですが、相当数とは一般に考えられる複数人への貸付けをすることをいいます。
また、定型的なとは、貸付規程に基づいて貸すということです。
この貸付規程とは、市民農園の利用者(農地の借受者)に対して、貸付期間や賃料などを定めたり、募集の方法などを定めたりすることを指します。
また、市民に農地を貸し付けるわけですから、市民が農地を使い収穫物を得る権利(使用収益権)が発生します。
ところが農地に権利設定をするためには、原則として農業委員会の許可を必要とします。
そこで、農業委員会から市民農園の開設の承認を受けることで、使用収益権の設定についても特例が適用され、別途許可が不必要になります。
この農業委員会への承認申請の際に、市町村と結ぶ協定である貸付協定と、前述の貸付規程が、必須の条件とされています。
2.の非営利の栽培ですが、最初から販売目的で借り受ける利用方法は営利目的とされます。
ただし、自家消費ができないほどの収穫があった場合に、近所に配ったり直売所で販売をしたりすることは可能となります。
また3.の貸付期間が5年以内ということですが、短すぎると栽培する作物が限定されてしまいますし、期間が長すぎると広く一般に利用させる趣旨にそぐわないということになるため、5年となっています。

<h2>農園利用方式による方法について</h2>

この農園利用方式による方法とは、農地の所有者が農業経営を行い、農作業に市民が参加することで、入園料を受け取る方法です。
農地を貸し付ける方法ではないので、利用者に対する使用収益権の設定もなく、農地法の規制を受けることもありません。
この農園利用方式は、下記の要件があります。
1.相当数が定型的な条件で行うこと
2.営利を目的とした栽培ではないこと
3.農作業が継続して行われること
この定形的な条件とは、農園利用契約により、適切な運営のために利用期間や利用料金を定めることです。
また、農作業が継続して行われるとは、例えば、収穫だけをさせる観光農園のような形態ではなく、段階的な複数の農作業を市民が体験するような形態のことを指します。
開設できる場所ですが、制限はありません。
ただ、モラルの低い利用者が周辺に迷惑をかけないよう、適切な運営管理が必要とされます。
また、開設者は農機具・苗・堆肥を用意し、市民に農作業体験をさせるということになります。
またできた野菜や果実は、農園利用方式では開設者の収穫物として扱われます。
これも契約により、利用者の収穫物として定めることは可能です。
そして、開設者は純粋に農作業体験をするという内容の利用料を、利用者から受け取ることになります。

<h2>市民農園整備促進法による方法について</h2>
これは、特定農地貸付法による方法、または農園利用方式による方法に、付帯施設を設置して、利用しやすい環境を整える方法をいいます。
農地の貸付けを行えば「賃料」を、貸付けを行わず農作業体験なら「入園料」を受け取ることになります。
これは、比較的規模が大きい市民農園で利用されます。
付帯施設の分だけ投資は増えても、環境のよさから賃料・入園料を高くすることができます。
開設できる場所ですが、市街化区域は特に指定がありません。
しかし市街化調整区域では、市町村が「市民農園区域」として指定した区域に限定されます。
したがって、市民農園整備促進法による方法で市民農園を開設するには、市民農園区域として指定されているか、指定してもらうことが前提条件となります。
この市民農園整備促進法による方法では、市町村に開設を認定してもらうという手続きが必要となります。
そして、その市町村の認定が、農業委員会の承認を得たのと同じ効果になります。
さらに、付帯施設の設置に伴う農地の転用手続きが不要となりますし、建築等の開発が制限されている市街化調整区域でも、休憩施設やトイレ、管理事務所などを完備するための開発許可を受けることが可能となります。

市民農園の開設について、どうしたらよいのかわからない場合は、当職においても相談を受け付けております。
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農地で行う太陽光発電について

現在、田舎では耕作していない農地がたくさんあります。
その農地で農業を営むには、農地法により、農家でなければできないことになっています。
それで、相続で農地を取得した人や、事情があって農家をやめてしまった人にとって、農地は重荷となってしまいます。
では、どうすればその農地を活用することができるでしょうか?
1つの答えとして、農地で太陽光発電を行うという方法があります。
農地は日照が良く、遊休農地を収益物件として変える手法として、太陽光発電が注目されています。
電力会社が固定の価格で一定期間電力を買い取るという、固定価格買取制度が導入されてから、太陽光発電が普及してきました。
実現方法としては、農地転用する「転用型」と、耕作を続けながら行う「営農型」に分かれます。
それぞれ同じ面積当たりで、設置できる太陽光パネルの量が異なり、発電量も異なります。
例えば、1反1000㎡あたり、転用型では70kw、営農型では40kwの発電量となります。
以下に詳細を見ていきます。

<h2>転用型の太陽光発電について</h2>
転用型の太陽光発電を行うには、農地を転用しなければなりません。
農地の所有者自身が、農地以外の目的で農地を使用するには、農地法第4条に基づく農業委員会への転用許可申請を必要とします。
農地転用をして太陽光発電する場合には、農地転用許可の申請時に太陽光発電の計画がなくてはなりません。
実際に太陽光発電をすることを前提に、農業委員会から農地転用許可がおります。
ただし、市街化区域以外の区域では、転用が許可される農地は限られています。
具体的には、市街化が見込まれる第2種農地か、市街化が著しい第3種農地しか、農地転用が認められないということになります。
さて、農地転用許可が下りたとして、すぐに太陽光パネルを設置できるかと言えば、そういうわけではありません。
太陽は真昼でも頭上に位置することはありませんので、できるだけ多くの太陽光を発電パネルで受けるためには、発電パネルを傾けなくてはなりません。
発電パネルを傾けて設置するには、架台を必要としますが、傾けるほど風圧による影響を大きく受けますし、架台はしっかり地面に固定しなければなりません。
ところが、畑は通常地盤はフカフカであり、田んぼであれば、地盤はドロドロの粘土質ですので、架台の基礎を固定するために地盤改良が必要となります。
これらの費用が掛かりますので、採算性に影響してきます。

<h2>営農型の太陽光発電について</h2>
ソーラーシェアリングによる営農型の太陽光発電は、支柱を立てて、農地の上空に発電パネルを並べて設置することにより、発電をします。
下にある作物が育つ最低限の光量を確保するため、発電パネルで覆うのではなく、一定間隔の隙間を作って太陽光パネルを並べます。
しかし、支柱を農地に立てる行為は、ビニールハウス等と違って農業目的ではなく、農地を農地以外で使うことには違いないので、農地転用における「一時転用」の許可を必要とします。
その代わり、営農型の場合は、農地転用の一時転用となることで、恒久的な転用ができない農地も対象になりますので、農業に副収入を見いだす手法として注目されています。
また、この太陽光発電は、ほとんどメンテナンスを必要としないということで、農業への労力が損なわれないので、農業が維持される限りにおいては行政も認めてきた
さて、この発電パネルを支える支柱は、耕作以外で農地を使用する状況を例外的に認めるものなので、簡易で容易に撤去できる方法をとることになります。
多い事例では、単管パイプの支柱を使って組み上げる方式が挙げられます。
また、農地をコンクリートで固める行為は認められません。
さらに、作物への日照の影響を避ける意味からも、強固で太い支柱は不向きとなります。
このあたりは行政側と調整が必要になるので、農業委員会等へ相談してみることができます。
さて、農地転用許可における営農型の太陽光発電は、営農が適切に継続されることを条件として認められます。
その条件としては、下記の通りとなります。
1.下部の農地の単収が地域の平均的な単収よりも2割以上減少しない
2.作物の品質に著しい劣化が生じない
3.農作業に必要な機械等の効率的な使用が妨げられない
3においては、支柱をある程度高くする必要があることを示唆しています。
さて、この営農型における農地転用は、恒久的な転用と異なり一時転用しか認められません。
この一時転用は、3年間を転用期間とし、4年目はそれまでの実績に応じて営農が適切に行われていると判断されれば、再び3年間の一時転用が許可されます。
また、太陽光発電設備の下部で生産された作物の状況は、毎年報告することが、一時転用許可の条件にもなっています。
単年でも作物による収益が著しく落ちるようなら、必要な改善をしなくてはなりませんし、太陽光発電設備の下部で作物が生産されていない場合は、撤去の対象となります。

<h2>営農型太陽光発電の法改正と農林水産省の支援について</h2>
今まで営農型の太陽光発電の許可は一律3年間でした。
しかし、平成30年5月に太陽光発の農地転用許可制度が見直されました。
今回の法改正で一定条件を満たす場合は、期間が10年以内になるようになりました。
一時転用許可期間を10年以内に伸ばすのに必要な条件は以下になります。
1.担い手が所有している農地又は利用権等を設定している農地で、当該担い手が下部農地で営農を行う場合
2.農用地区域内を含め荒廃農地を活用する場合
3.農用地区域以外の第2種農地又は第3種農地を活用する場合
また、農林水産省は、一時転用期間の延長の他に、農山漁村再生可能エネルギー相談窓口を設置しています。

http://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/r_energy/attach/pdf/180515-5.pdf#search=%27%E8%BE%B2%E6%B0%B4%E7%9C%81+%E8%BE%B2%E5%B1%B1%E6%BC%81%E6%9D%91%E5%86%8D%E7%94%9F%E5%8F%AF%E8%83%BD%E3%82%A8%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC%E7%9B%B8%E8%AB%87%E7%AA%93%E5%8F%A3%27


営農型太陽光発電でどれくらいの収益が出るのかといった農業者の相談に乗ったり、優良事例の収集や専門家の紹介をするなど、営農型太陽光発電を検討する農業者をバックアップしてくれます。
さらに、農林水産省は相談窓口などの設置に続き、平成31年2月には営農型太陽光発電の取り組みを支援するガイドブックを制作しています。
営農型太陽光発電取り組み支援ガイドブック

http://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/attach/pdf/einou-15.pdf


農地で行う太陽光発電について、どうしたらよいのかわからない場合は、当職においても相談を受け付けております。
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所有者全員の合意で空き家を売却する方法について

空き家の名義が共有で、それぞれに持分がある場合は、売却処分が大変になります。
前回見た通り、空き家の名義が複数人にわたる場合、全員の同意がないと売却処分できないからです。
しかし、簡単に所有者全員が合意できるわけではありません。
また、合意による売却にも、その方法があります。
それで今回は、所有者全員の合意で空き家を売却する方法について説明したいと思います。

<h2>共有名義の空き家の売却の方法</h2>
共有名義の土地を売るには、全員が売主になり、合同で売るという手順になります。
その手続として、共有者全員が立ち会って、売買契約書に署名と実印での押印をする、ということになります。
その際に、印鑑証明、住民票、本人確認書類などが必要になります。
全員が1箇所に集まって、契約や決済の手続きを行うのが原則です。
しかし、日程調整が難しく、全員が集まるのが困難な場合があります
その場合は、誰かが代表して売買するために、他の人からの委任状を用意します。
代表する人を除く共有人全員が、1人に全権委任する委任状を作成すれば、1人でも売却手続きできます。
ただし、上記の登記申請の受任を受けた司法書士は、委任状に不正があると勝手に売却できてしまうので、通常、委任した本人の売却意思を確認します。

<h2>売却の委任状について</h2>
委任状とは、委任者から受任者に対して、代理権を授与するための書面になります。
本件の場合は、各共有者が、手続を代理して土地を売る人に、代理権を授与することになります。
委任は口約束でも有効ですが、書面に残さないとトラブルになることや、買主にとっては口約束の委任など信用できないということがあり、必ず委任状を作成します。
委任状の書式として、含める内容は下記の通りです。
1.委任者の住所氏名と受任者の住所氏名押印
2.委任者が受任者に委任する旨
3.受任者に委任する権限
4.土地家屋の表示
うち、2.の委任者が受任者に委任する旨とは、委任の事実が分かる内容であり、「○○は××に下記土地の売却を委任する」などという文言です。
また、3.の受任者に委任する権限については、家族間ですべてを任せるなら「一切の権限を委任する」という記載となりますし、特定の権限を委任するなら、その権限を列挙して個別に記載するということになります。
特定の権限とは、例えば、売却価格の決定、売買契約の締結、手付金・違約金の額、手付金・売却代金の受領、決済日や引き渡し日の決定、登記手続きに関する権限などとなります。
また、委任状に添付する書類ですが、押印には実印を使うのが通例ですから、印鑑証明書も添付します。
その他に、本人確認書類として、住民票の写しと、運転免許証などのコピーも必要です。
また、登記簿上の住所と住民票の住所が異なる場合、住所変更登記についても委任状で委任する必要があります。
この住所についても、登記事項証明書の住所から、住民票の現住所への移転が証明される住民票等が必要になります。

<h2>売却時の利益や費用について</h2>
売却が共有者の合同でされるので、共有名義の土地家屋を売却して得た代金や経費は、すべて持分に応じて全員に分割されます。
それで、利益が出たときに課税される譲渡所得税も、共有者全員がそれぞれ確定申告して納税することになります。
名目上代表者1名の名義などとして売却されるとしても、実質的には共同売却しているので、代表者だけが譲渡所得税を負担するわけではありません。

<h2>売却時の窓口について</h2>
窓口は1人に絞ったほうが良いです。
これは、委任状を持って1人が売却する場合でも、また全員で売却する場合でも、そうなります。
不動産会社対応、銀行対応等、様々で手分けしたくなるとしても、それで分けてしまうと、契約書に漏れがあるなどの場合大変になります。
なお、窓口は持分が最も大きい人がなるのが通例ですが、これも共有者同士でよく話し合うことが必要です。

<h2>売却額を決める</h2>
売却額は、もめる事項の1つです。
それで、販売を開始する前に共有者と話し合い、売却希望額と、もし価格を下げるならいくらまで大丈夫かを、決めておくことができます。
共有者が多いほど、意思決定に時間がかかりますが、意思決定している間に、買主が別の不動産に決めてしまったということなどが生じ得る可能性もあります。
それで、販売を始める前に、方針やお金が関わる判断は共有者同士で決めておいて、意思を統一することができます。
また、空き家を中古住宅として販売するのか、それとも解体して更地にして売るのかも決めておくことができます。

共有の空き家の売却ををどうしたらよいのか、わからない場合は、当職においても相談を受け付けております。
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共有名義の空き家を売るにはどうしたらよいか

空き家が共有名義になっている場合があります。
これは、空き家の所有者が亡くなって複数人が相続した場合、夫婦でマイホーム用の土地を購入するときに資金を出し合った、といったようなケースが考えられます。
また、親子が二世帯用住宅の土地を購入するときに資金を出し合ったような場合もあります。
こういった空き家を処分するには、どうしたらよいのでしょうか?

<h2>共有者全員の同意が必要である理由</h2>
空き家の名義が複数人にわたる場合、全員の同意が必要になります。
その理由として、民法第251条では、「他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。」という規定があります。
このように、民法第251条では、共有物に変更を加える際は全員の同意が必要とされています。
空き家の売却やリノベーションなどは共有物の変更にあたるので、こういう場合は全員の同意が必要なのです。
また、民法第252条では、「共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に伴い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。」という規定があります。
つまり、管理と保存行為は全員の同意がなくてもできるということです。
例えば、空き家を賃貸する場合は、持分価格の過半数の同意があれば可能になります。
また、第252条但書で、保存行為は単独で行うことが可能とされています。
ここで言う保存とは、庭木選定や、建物の外壁工事などの修繕などのことになります。
そういった修繕は、共有者単独で行うことができます。

<h2>共有の空き家を売却する方法</h2>
共有の空き家を売るには、下記のような方法を取ることになります。
1.所有者全員の合意で通常売却
これは、所有者全員の合意で通常の売却をするパターンです。
空き家の所有者の全員が売却に合意すれば、通常の空き家の売却と変わることなく、売却することが出来ます。
これが最も高く売ることができる可能性がある方法です。
所有者全員の目的が揃っている、所有者全員の関係性が良好など、合意の元に売却ができる場合はこの方法が良いと言えます。
そして、この共有の空き家は、共有者全員が一度に集まらなくても、委任状の作成によって、1人でも売却することができます。
2.持分売買
これは所有者全員の合意が出来ないが、どうしても売却をしたいという場合、自分の持分だけを売却する、という方法のことです。
こうすると、個人の意思決定だけで売却ができる、ということになります。
ただし、共有持分を手に入れても、通常の土地建物のような融通が利かないため、売却価格は低くなります。
共有者や第三者に買い取ってもらう方法の他、共有持分買取専門業者もありますので、そういう業者を使う方法も取れます。
3.土地の場合、分筆して売却する
分筆とは、土地を細かく区切り直して登記し直すことで、1つの土地を複数の土地に分ける方法をいいます。
分筆を行えば、元々共有の持ち分であった土地よりも小さくなるものの、それぞれが独立した1人の所有者に所属する土地にすることが可能となります。
また空き家の建物の場合でも、もし複数部分に分けられるのであれば、区分建物にするなどして、分筆の方法を応用することもできます。

<h2>共有持分の放棄はできるか</h2>
土地の保有はしたくないが、売却が困難であるなどの事情がある場合、共有持分を放棄することも可能です。
民法第255条によると、「共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。」とあります。
放棄という法律行為は、単独行為になりますので、共有持分の所有者が放棄すると意思表示したら、放棄したことになります。
そしてその場合、放棄された所有権は他の共有者に移転をします。
そして、その旨の持分放棄の登記が必要になります。
ただ、注意すべき点として、この放棄は権利の譲渡と同じですので、贈与税がかかる場合があります。、
共有持分の放棄が贈与とみなされ、共有持分を新たに所有した人は、贈与税を支払う必要が出てくる場合がありますので、注意が必要です。

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農地を貸すにはどうしたらよいか

<h2>農地を相続する場合</h2>
農地は農家でなければ取得ができず、第三者同士の取引は農地法で寄生されています。
しかし、農家以外の相続人が、農地を相続する場合があります。
その場合でも、農業委員会への届出制度があります。
相続による取得から10か月以内に、地元の農業委員会に届け出るという、簡単な手続きにになります。
この届出を怠ると10万円以下の過料に処せられるため、忘れずに行う必要があります。
なお、この届出書には、農業委員会によるあっせんを希望するかどうかという記入欄があります。
活用方法が決まっていない農地なら、積極的にあっせんを受けて活用したほうがよいです。

<h2>農地を貸す方法</h2>
相続したが、自分が耕作しない農地は、売却するか貸すか、ということになります。
農地を農地以外の用途に使うためには、農地転用制度といって、農業委員会の許可が必要です。
転用が許可されれば農地ではなくなり、所有者が自由に利用や処分ができるようになります。
しかし、農地転用ができる農地とできない農地があります。
それで、地元の農業委員会に、自分が相続した農地が転用対象であるかどうかを問い合わせるということが確実です。

<h2>農地を貸す場合の事例</h2>
転用できる農地なら、農地転用の許可があれば、自由に貸すことができます。
この場合、借主がどのように使用したとしても、貸主は地代を受け取るだけになります。
以下にどのように貸すかについて説明をします。
1.個人向け住宅用地として貸す
移住者が自ら住宅を建てる、または転勤者が賃貸するための住宅を建てる事業者に、住宅用地として貸し出します。
農地が大きすぎる場合には、分筆して貸し出すこともできます。
住宅用地では、土地だけあってもダメで、宅地として電気・ガス・上下水道の引き込みが容易でなくては好まれません。
そのため、これらの引き込みが容易な、公道に接する農地が対象になります。
2.高齢者向け住宅用地として貸す
高齢者向け住宅とは、いわゆる老人ホームとは異なり、賃貸住宅に医療や介護サービスを付加した、健常な高齢者も対象にする住宅です。
医療・介護事業者の他にも、不動産会社が間に入って転貸する事業形態も行われています。
これもライフラインが必要ですので、道路に接している必要があります。
3.事業用地として貸す
この用途は、店舗、事務所、工場などが考えられますが、いずれの場合でも、事業用地のほとんどは交通量が見込める沿道が条件なので、貸し出せる農地は限られています。
ただし、事業用地の場合には、借主の業績が悪化すると撤退してしまうリスクがあります。
例えば、ロードサイドの代表格であるコンビニでは、特に撤退も早く予測は困難となります。
その一方、成功すれば、長期安定収入が得られ、契約終了後は更地で返還してもらえます。
4.太陽光発電用として貸す
太陽光発電で最も重要視されるのは日照の良さです。
農地は日照があるので、太陽光発電用としては最適であると言えます。
ただ、太陽光発電事業は、10年間を初期投資の回収期間としています。
それで、長期間の賃貸借契約に拘束されるというデメリットも出てきます。
5.駐車場用地として貸す
ある程度人口があり、利便性が高い農地なら駐車場用地にすることもできます。
駐車場の良い点は、投資コストが小さいことで、極端な例では地面にロープを張って区画にするだけで成り立ちます。
大きな収益を得られる方法ではないとはいえ、短期的な賃貸借契約にするなど自由度が高く、相続までの一時的な貸し出しとしては優れている方法です。
6.資材置き場として貸す
資材置き場は、運搬車両が出入りする関係で、道路に接していることが条件です。
また、近隣に資材を置きたい会社がないと、需要はありません。
一時的な需要として、付近の工事で発生する資材や機械、車両の置き場として、農地が必要とされる場合があります。
しかし、農地転用の手続きと時間がかかることがネックとなり、事前に話を持ち掛けられないと難しいという面もあります。
7.農地として貸す
農地として貸す場合でも、農業委員会の許可が必要で、簡単に貸すことはできません。
しかし、以下の方法で貸すこともできます。
・農家に耕作用として貸す(許可必要)
これは、許可が必要ですが、使いたい農家に貸すことができます。
・市町村の農用地利用集積計画を利用して貸す(許可不要)
市町村が借りたい農家とのマッチングをしてくれます。
ただし、すべての農地を対象とはしていません。
農地集積バンクを利用して貸す(許可不要)
都道府県の第三セクターが借り受け、農地を借りたい人に転貸するという形になります。
また、これは農業振興地域の農地のみとなります。
市民農園として貸す(許可不要)
これは農地を貸す方法、農業体験をさせる方法、それら2つに付帯施設を伴う方法があります。
いずれにしても、市町村に問い合わせをすることができます。

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最新(2018年10月現在)の空き家率と空き家戸数について

日本の人口が減っていくのに、新築住宅の建設がまだ続いています。
そうなると、空き家の戸数が必然的に増加していく、ということになります。

<h2>個人住宅の空き家の増加</h2>
最新(2018年10月現在)の空き家率・空き家戸数などが発表になっています。
これは、総務省が4月26日発表した2018年10月時点での住宅・土地統計調査に基づく統計数字になります。
平成30年住宅・土地統計調査です。
やはり空き家率・空き家戸数の増加傾向は続いています。
近年空き家対策の施策が行われているものの、成果が出ていないようです。
今回の統計において 全空き家に占める「その他の住宅」つまり個人住宅の割合が、38.8%から41.06%に増加しています。
「賃貸用の住宅」は2万戸(0.4%)の増加なのに対して、「その他の住宅」が29万戸(9.1%)の増加となっています。
「その他の住宅」の戸数そのものも、318万3600戸から、347万3700戸と、約29万戸増えています。
つまりこの5年間で主に増えた空き家は、個人住宅の空き家である、ということがいえます。
なお、大阪府の「その他の住宅」の空き家戸数は、前回の21万4400戸から20万8400戸に減少しています。
これは、コロナ禍を経て再び、なんば駅周辺の心斎橋、道頓堀、黒門市場、新世界、また大阪城などが、外国人旅行者で埋め尽くされている現状からみてわかる通り、インバウンドに伴うゲストハウスや民泊などへの用途変更が進んだとみられます。
また、国内の住宅総数に占める空き家の割合は、過去最高の13.6%となっています
政府は、中古住宅の活用や老朽化した空き家の撤去を促す政策を相次いで導入していますが、空き家の増加に追い付いていないのが現状となっています。
住宅戸数も179万戸多い6242万戸となり、過去最多となっています
それで、住宅総数、空き家数、空き家率とも右肩上がりが続いているという現状です。

<h2>どういう空き家がどこで増えているのか</h2>
空き家のうち、「その他の住宅」347万戸は、賃貸や売却用以外で、長期にわたって不在の住宅や取り壊し予定の住宅です。
賃貸用は431万戸、売却用は29万戸、別荘などの「二次的住宅」は38万戸となっています。
空き家率が最も高い都道府県は、21.3%の山梨県
次いで20.3%の和歌山県、19.5%の長野県、19.4%の徳島県となっています。

<h2>空き家対策をどうしたらよいのか</h2>
人口は減り、空き家は増えているので、現在は、新築住宅建設に規制をかけていくべきといえます。
現在、空き家対策に公費を投入している現状があります。
それで、経済合理性だけを追求した無秩序かつ無計画な新築着工に対して、行政がしっかり規制していくべき段階に来ていると言えます。
人口が減り、空き家が増えている中、新築中心の住宅市場のままだと、住宅は資産としての価値を保つことができません。
また、賃貸市場に出ている空き家、空き室はまだいいとして、賃貸市場に出ていない個人住宅の空き家は外部不経済や機会損失などの弊害が生じがちです。
増え続ける個人住宅の空き家を社会的課題解決の場所として活用したり、街の新しいコンテンツとして再生したりするといった働きかけが、ますます重要になってきます。
また現在、生活費に占める家賃の比率は、東京都の25歳未満で44.9%に達しています。
つまり、収入の半分近くを家賃として支払っているということになります。
最近、家賃滞納者が多いと言いますが、その一因が高すぎる家賃ということは言うまでもありません。
それで、現在何も使われていない「その他の住宅」の空き家を、貸家として供給をすることにより、供給が増えて家賃が下がることになりますので、家賃比率を下げ、低廉な賃貸住宅の提供をすることができます。
これは、中古住宅市場においても同様といえます。
住宅の所有者こそ、自分たちの資産を守るために、たくさん新築住宅を建てて住宅を余らせるのではなく、新築中心から中古中心への住宅市場の転換を訴えていく必要があるといえます。

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2022年生産緑地問題と空き家について

現在でも、地方や都市部において、空き家が増大しています。
2017年時点においても、すでに1000万戸を突破しているものと思われます。
そして、今後も人口減少、世帯減少のために、空き家がさらに増大すると見込まれています。
それだけでなくさらに、下記の生産緑地の問題によって、空き家が増大するという事情が発生します。
それが、2022年の生産緑地問題です。

<h2>生産緑地のなりたち</h2>
1974年に生産緑地法が公布されました。
これは、市街化区域内の農地の宅地化を促す目的で、一部自治体において、農地の宅地並み課税が行われたというものです。
当時は深刻な住宅不足が問題となっており、その解消のためにこういう処置を取っています。
その後、1992年の法改正により、市街化区域内の農地は、農地として保全する「生産緑地」と、宅地などに転用される農地に分けられました。
生産緑地に指定されると、固定資産税は農地並みに軽減され、相続税の納税猶予を受けることも可能になります。
その代わり、建築物を建てるなどの行為が制限され、農地としての管理をしないといけない、というわけです。
同法の適用が1992年からであり、その期限が30年後、つまり2022年となります。
この期限を迎える2022年に、所有者が病気などで農業に従事できなくなったり死亡した場合に、所有者は市区町村の農業委員会に土地の買い取り申し出を行える、ということになります。

<h2>生産緑地はどれだけあるか</h2>
この生産緑地ですが、放出可能性のある地域は東京23区、首都圏・近畿圏・中部圏内の政令指定都市、その他整備法に規定する一部地域となっています。
そして、2013年3月時点の生産緑地は全国で1万3442ヘクタール(約4066万坪)あるとされています。
一戸建て住宅1軒建てるのに35坪必要としますと、およそ116万戸の一戸建て住宅の建設が可能、ということになります。
そして、その土地がマンションやアパート用地に変貌した場合には、その戸数は飛躍的に増大することになります。

<h2>生産緑地が解除されたらどうなるか</h2>
さて、2022年となって、所有者が農業委員会に土地の買取請求をするとしても、まず市区町村は予算不足等の原因で買取ができないと見込まれます。
それで、生産緑地として他に買う者がいない場合には、この生産緑地指定が解除されます。
そうなると、従前は固定資産税が優遇されて低かったのが、数百倍にハネ上がってしまいます。
それで所有者は土地を持ち続けられず、売却するしかなくなる、ということです。
こういったまとまった土地を仕入れることができるのは、一般の人ではなくて、一戸建てを建設する大手ハウスメーカーやマンションディベロッパーという業者になります。
まさに業者は、その2022年に向けて、虎視眈々と狙っている、ということです。
また、立地に難がある土地では、アパート建設が進む可能性が高いです。
土地の上に土地の上にアパートなどの住宅を建てれば固定資産税や相続税評価額が下がります。
賃貸住宅を建てれば、土地の固定資産税は6分の1になり、相続税の対策にもなります。
それで、現在でもレオパレスなどのアパートが大量に建てられ、空室率が高まっています。
そんな空室がさらに増大して、さらにアパートが元農地にたくさん建てられ、人口も減っているので入居も進まず、結果として空き部屋だらけのアパートが増加する、ということになりかねません。
そうなると、現在空き家になっている古家にしても、いざ2022年以降に貸そうとしても、入居者を見つけるのがさらに難しいということになってしまいます。

<h2>国はどういう対策を取っているのか</h2>
国もそういう事態になることは十分に予測しています。
それで、生産緑地の指定期限が切れた30年後も、10年毎の延長を可能とする「改正都市緑地法」の施行を6月に行っています。
しかし、その時にはすでに30年が経過していますので、土地所有者の高齢化が進んでいます。
それで、実際に延長ができるのは、所有者が農地を維持できる体力があるか、後継者がいる場合に限られます。
また、単に農地として維持するのではなく、農産物の直売所や農家レストラン等の設置も可能となっていますが、これも事業意欲のある後継者がいるなどの場合に限られると思われます。

<h2>生産緑地の土地をどうしたらいいのか</h2>
2022年に、宅地化された大量の土地が市場に流れ出るということになります。
そうなると土地の供給過多が起こり、不動産価格の急激な下落が起こる可能性があります。
不動産投資家だけでなく、住居を購入しようとする方にも大きく影響するでしょう。
つまり、その時点で、ハウスメーカーなどに売るのか、アパートを建てるのか、それとも農地のままにするのかを決めないといけない、ということになります。
その農地の立地や面積、また所有者の状況を見ながら、総合的に最良の解を出していくという作業になるものと思われます。

生産緑地にある農地をこれからどうするのか、わからない場合は、当職においても相談を受け付けております。
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空き家を売却する場合の税金と、3000万円控除について

親から引き継いだ空き家をどうするか、貸すか売るかどうするかは、悩みの種です。
その空き家の活用について、一番取りうる選択肢は、売却する、ということになります。
それで、売却する場合の税金や控除について、これから見ていきます。

<h2>空き家を売却する場合の税金</h2>
空き家を売るにあたって、売却価格が取得費と譲渡所得を上回れば、利益が出ることになります。
この利益つまり譲渡所得に対して、譲渡所得税、復興特別所得税、住民税がかかることになります。
この税金の計算方法は下記の通りです。
税金 = (1) 譲渡収入金額-( (2)取得費+(3)譲渡費用)×税率
(1)譲渡収入金額:不動産売却代金のことです。
(2)取得費:その不動産の購入金額、またその際に支払った仲介手数料など、不動産を購入する際に罹った金額の合計のことです。
(3)譲渡費用:その不動産を売却するためにかかった費用のことです。仲介手数料や印紙代をさします。
次に税率についてです。
これは、不動産を所有していた期間によって変わります。
5年以上保有していた場合は、譲渡所得税率は15%、住民税は5%です。
5年未満保有していた場合は、この税率が30%、また住民税も9%となります。
この期間は、親が実家を所有していた期間も含みます。
不動産の取得費が分からない場合が多々あります。
そのような場合、取得費は売却価格の5%で計算するということになっています。
つまり、例えば1000万円で売却する不動産の取得原価は50万円となるので、売却経費がない場合は950万円に対して課税されてしまい、税率15%とすると140万円の課税となってしまいます。
税金で損することにならないために、相続前に重要書類の置き場所を確認しておくことが大切になります。
また、相続した不動産を売却する場合、相続税を取得費に加算できる制度もあります。

<h2>譲渡所得の特別控除</h2>
上記の通り、相続による不動産の売却には税金がかなり掛かってくる場合があります。
その一方、空き家を売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円が控除できる「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」という制度があります。
定義として述べますと、相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等を、平成28年4月1日から令和5年(2023年)12月31日までの間に売って、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができる、という制度です。
この被相続人居住用家屋ですが、次の3要件すべてに当てはまるものになります。
1.昭和56年5月31日以前に建築されていたこと。
2.区分所有建物登記がされている建物ではないこと。
3.相続の開始の直前において、被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。
また、被相続人居住用家屋の敷地等、ということですが、相続の開始の直前において被相続人居住用家屋の敷地の用に供されていた土地又はその土地の上に存する権利のことを指します。
この3000万円控除の適用を受けるためには、下記の条件を満たす必要があります。
1.売った人が、相続又は遺贈により被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等を取得したこと。
2.相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋を売るか、被相続人居住用家屋とともにその敷地等を売ること。
3.相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋の全部の取壊し等をした後に。被相続人居住用家屋の敷地等を売ること。
さらに、被相続人居住用家屋は下記の条件を満たすことが必要です。
1.相続の時から譲渡の時まで、事業の用、貸し付けの用または居住の用に供されていたことがないこと。
2.譲渡の時において、一定の耐震基準を満たすものであること。
3.家屋の敷地について、取り壊しの時から譲渡の時まで、建物又は構築物の敷地の用に供されていたことがないこと。
またこの売却ですが、相続の開始のあった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが必要です。
さらに、売却代金が1億円以下であることが必要です。
ここまででも複雑ですが、さらに条件が付きます。
1.売った家屋や敷地等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など、他の特例の適用を受けていないこと。
2.同一の被相続人から、相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等について、この特例の適用を受けていないこと。
3.親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと。
要するに、第三者に対して売却していることが必要になるということです。

<h2>適用を受けるための手続</h2>
この特例の適用を受けるためには、確定申告での手続を、税務署に対して行わなければなりません。
(1)家屋又は家屋及び敷地等を譲渡する場合
 ア 譲渡所得の金額の計算に関する明細書
 イ 被相続人居住用家屋、その敷地等の登記事項証明書等
   ・法務局にて家屋、その敷地等の登記事項証明書等を取得可能。
 ウ 被相続人居住用家屋、その敷地等の売買契約書の写し等
 エ 被相続人居住用家屋等確認書
   ・被相続人居住用家屋の所在市区町村に申請し、交付を受ける。各市町村の役所、役場です。
たとえば、京都市での被相続人居住用家屋等確認書の取得については、下記のページを参照してください。

https://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/cmsfiles/contents/0000202/202925/R050407QA.pdf


 オ 被相続人居住用家屋の耐震基準適合証明書又は建設住宅性能評価書の写し
(2)家屋の取壊し、除去又は滅失後の敷地等を譲渡する場合  (1)のア~エの書類

空き家を売却する場合の税金や、3000万円控除が受けられるかどうか、また手続についてもわからない場合は、当職においても相談を受け付けております。
またお気軽にお問い合わせください。

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耕作放棄地が生まれる原因と再生利用について

前回、耕作放棄地の現状について記しました。
今回は、耕作放棄地が生まれる原因と再生利用について記したいと思います。

<h2>耕作放棄地が生まれる原因と背景</h2>
農地の所有者が意図的に耕作を放棄しているとは限りません。
耕作したくてもできない人から生まれる耕作放棄地の方が深刻といえます。

<h3>初期投資の必要な自営業という側面</h3>
職業として農業に従事したい人が不足しています。
その原因として、高齢化による離農、若年層の好み、労力のわりに生産性が低い、天候に左右される、参入にハードルが高い、参入の費用が出ない、効率化しにくい土地が多いなど、様々な理由が挙げられます。
また、農業参入に対するハードルとしては、農地法による制限が挙げられます。
農地の所有権を取得するためには、地域の農業委員会に許可を得なければならず、農業委員会が許可を出すのは、相手が農家若しくは農業従事者だけです。
新規参入者はまだ農家ではありません。
それで、農業委員会は農地の取得を認めません。
農地がなければ農業は始められないので農地が持てないという妙な状況です。
それで、最初は農地を借りて耕作するという形で農業経験を積むしかない、ということになります。
さらに、農業は、農業機械を揃えたり、最初の収穫までの生活費など、最初の初期投資が多い自営業となります。
つまり、農業は先行投資型事業であり、農業を始めたい人が簡単に参入できるような仕組みにはなっていない、ということになります。

<h3>土地持ち非農家の問題</h3>
また、農地を持てるのは農家だけですが、例外的に農地を相続した時だけは無条件で、農地の所有ができます。
しかし、その相続人が農業を始める割合は低いと思われます。
相続した人が農家に転業しないと、耕作放棄地になってしまいます。
農地は元々耕作用としか認められていないため、農地の活用を考えようにも方法が見つからず、結局耕作放棄地になってしまいます。
農地転用できると良いのですが、転用にも制限がかかっており、農地を保護するという壁が立ちはだかります。

<h3>転用と値上がりへの期待</h3>
農地の転用は、比較的市街地に近い農地しか認められません。
しかし市街地は徐々に広がっていくという期待があって、やがては自分の農地も転用可能になって、高く売れると考える一部の農家は、農業ができなくても農地を手放さない、ということになります。
また、農地の固定資産税は、宅地に比べて1/10から1/1000ほども違うとされており、農地保有のコストは小さく済みます。
ただし、固定資産税は現況主義であり、耕作放棄と判断されたら、宅地並み課税の可能性もあります。

<h2>耕作放棄地の対策について</h2>
耕作放棄地の対策は、本来所有者が行うことです。
最近は、太陽光発電市民農園といった活用アイデアもあります。
しかし、行政がかかわらなければ、対策が難しい場合もあります。
それで、制度として国または地方自治体がどのような耕作放棄地対策を進めていくのかを紹介します。

<h3>農地集積バンク</h3>
都道府県には、農地中間管理機構が設置されています。
その機構が、小口農家の農地や再生可能な耕作放棄地を借り受けて集め、大きな区画に整備して、経営規模を拡大したい農業経営者(法人を含む)に貸し出す、という仕組みになります。
また、農地の売買もできます。
ただし、農地の再生が難しいほど荒廃した耕作放棄地は、借り受けの対象としない原則があるため、耕作放棄地なら何でも貸せるというものでもありません。
公的機関の農地中間管理機構が借り受け先となって転貸する形になりますので、農地所有者にしてみれば、賃料収入に不安がなくなり、個人間の権利関係で農地を返してもらえない不安からも解消されるという利点はあります。
これは、アベノミクスの成長戦略の1つでもあり、数千億円もの税金を投入して農地の集積化をしていく予定ですが、成果が上がっておらず、平成26年度ですが、達成率は目標の2割にとどまるということです。
その理由として、耕作放棄地を含む遊休農地の所有者が、10年以上機構に貸すよりも、宅地に転用して売却できるのを待っている側面もあるとされています。
また、農地集積バンクよりも前に、農地の利用制限を緩和・撤廃すべきという意見もあります。

<h3>固定資産税の課税強化</h3>
政府は、平成29年度以降、耕作放棄地の解消と農地集積バンクの利用促進を目的として、耕作放棄地の固定資産税を約1.8倍に増税しています。
対象になる農地は、農業委員会が再生可能と判定した耕作放棄地であり、農地集積バンクへ貸し出す協議を勧告されることにより、増税開始となります。
しかし、この増税については、耕作放棄しかない人にとっては受け入れがたいものではないかと思います。
増税に屈して、誰にも貸したくない農地を貸すというのも不本意なことです。
そもそも、農地の流動性を下げているのは、農地が農地以外に使えないという制限です。
しかし、農地の利用制限を外してしまうと、農地の減少につながります。
それで、政府は農地集積バンクへの貸し出しを増税の逃げ道にして、耕作放棄地を解消していこうとしている意図のようです。

<h3>荒廃農地等利活用促進交付金</h3>

耕作放棄地を耕作可能な状態に変えていくためには、耕地を維持するよりも多くの労力と費用が必要になります。
それで、耕作放棄地を再生する作業、つまり草刈り、ごみ除去、深耕、整地、土壌改良などを支援し、交付金を交付する緊急対策が、行われています。
この交付金についての概要は以下の通りです。

https://www.maff.go.jp/j/budget/attach/pdf/170831-42.pdf

 

<h3>自治体の補助金</h3>
耕作放棄地再生利用緊急対策交付金と似たような趣旨の補助金を、各自治体で個別に用意しているケースが、多くあります。
たとえば京都府亀岡市では、多面的機能支払交付金の制度があります。

www.city.kameoka.kyoto.jp


これは、地域の取り込みや個人の取り組みに対して補助をする支援ということになっています。
このように、各自治体に補助金があるケースがあるため、地域の自治体に確認してみることができます。
自分で耕作できなくても、助成・補助を受けて、とりあえず容易に耕作可能な状態に保っていけば、売却・賃借の可能性が生まれてきます。

耕作放棄地をどうするかについても、わからない場合は、当職においても相談を受け付けております。
またお気軽にお問い合わせください。

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耕作放棄地の現状について

<h2>耕作放棄地の定義について</h2>
耕作放棄地とは、耕作に使われるはずの農地が、耕作されていない状態の土地のことを指します。
定義としては、過去1年以上の間、作物の栽培がおこなわれておらず、今後も耕作に使われない土地の状態を意味します。
耕作放棄が長期間になると、それだけ復元は困難になります。
この耕作放棄地を分類すると、次の通りとなります。
1.雑草を刈り耕せば、耕作が可能になる農地
2.直ちに耕作はできないが、整備を進めたら耕作可能な農地
3.長期間の放棄で農地への復元が困難な農地
直ちに耕作できる農地で、耕作の意思もある農家が何らかの理由で耕作していない土地は、休耕地となります。
なお、似たような言葉に「遊休農地」があり、こちらは耕作はされていても、利用の程度が著しく周辺より劣る農地が含まれます。
例えば、自分で食べるだけのわずかな作物を栽培しているケースなど、事実上は大半を放棄している農地であるものの、土地単位で見れば一応の耕作がなされていますので、遊休農地という扱いとなります。
実際はそこまで厳密に考える必要もなく、所有者の意思で耕作を放棄していれば、耕作放棄地ということになります。

<h2>耕作放棄地の問題点について</h2>

耕作放棄地には様々な問題が生じてきます。
以下に少しずつ列挙していきたいと思います。

<h3>雑草や害虫の問題</h3>
農地も個人所有の土地なので、所有者の意思で放棄するのも自由であるはずです。
しかし、耕作放棄で問題になるのは、放棄された土地よりむしろ周辺の土地に影響が及ぶということです。
つまり、雑草や害虫が増加してしまう、ということです。
雑草や害虫の増加を抑えるには、農薬が必要になりますが、作物を栽培しない土地に農薬をわざわざ使うということは考えられません。
そうなると、耕作放棄地では雑草や害虫が増えて、周辺の農地に悪影響が出ます。
周辺に迷惑がかかるのですが、その耕作放棄地も地権者が所有権を持っているので、どうにも折り合いが付かないようです。

<h3>中山間部の鳥獣の問題</h3>
さらにその耕作放棄地が中山間部になりますと、山間部に生息する鳥獣による被害が出てきます。
中山間部の農地は、人間の活動範囲として、動物の侵入に一定の役割を果たしており、その耕地の作物被害はあったとしても、集落への被害は食い止められてきた面もあります。
つまり集落の周辺に農地があり、さらに外側に山地があるという構造なので、人間と野生動物のテリトリーにおける緩衝地帯として、役に立っているというわけです。
ところが、耕作放棄地が増加すると、野生動物が活動範囲を広げるので、緩衝地帯がなくなった集落にえさを求めて現れてきます。
サルやイノシシやクマが、集落に現れて、それがニュースになる、ということも増えてきたように思います。

<h3>食料自給率の問題</h3>
もちろん、日本の食料自給率にも影響してきます。
万が一の事態で食糧輸入ができなくなった場合、自給率が低いと食糧危機に陥る可能性も出てきます。

<h3>ゴミの不法投棄</h3>
さらに、ゴミの不法投棄という問題が出てきます。
元から不法投棄する人というのはいるものですが、耕作放棄地が原野と化し、人の気配がないとなれば、なお一層不法投棄されやすくなります。

<h3>農地の集積化の障害</h3>
また、農地の集積化が遅れるという問題もあります。
農地の集積化とは、政府の方針であり、複数の農地を集めて一段の優良農地を形成し、大規模農業経営者に効率よく耕作させようとする働きかけです。
耕作放棄地は、耕作可能な農地とするためには大きな労力と費用を必要とするため、農地の集積化にとってはマイナスとなってしまいます。

<h3>農地の持つ多面的な機能の喪失</h3>
田畑には水が不可欠です。
その取水源は圧倒的に河川となります。
それだけでも河川の水位を下げる効果がありますが、雨量が多くなった時は、洪水を防止する機能が発揮されます。
田は畔があり、浅い貯水池のような形状が続きます。
それで、言って医療の雨を物理的に蓄えることができます。
また保水力があるので、雨水が地下に入って河川への流出を防ぎます。
つまり、大量降雨があって、洪水になりそうであっても、こういった保水機能があるため、田畑で蓄えてから河川へ流出し、結果として洪水が起きないか遅れます。
つまり、治水に役立つ、というわけです。
ところが、耕作放棄地になった場合は、保水能力が耕作地より低くなり、雨水が河川に流出しやすくなるので、洪水を引き起こす場合があります。
2015年9月の茨城県常総市の大雨と河川決壊の大水害は、ニュースを見て、衝撃で、記憶に新しいことかと思います。
あの洪水でも、田畑の広がる地域を流れていなかったら、もっと早くに堤防決壊していた可能性があるというわけです。

<h3>耕作を放棄し続けるとどうなるか</h3>
耕作放棄地は、土地としての実質的な価値も大きく損なわれていきます。
原野化した耕作放棄地は、農地への復元は難しく、宅地に転用しても造成費がかかります。
土地の価値は、使える状態にするための費用は控除して考えるのが普通で、耕作放棄地を引き取って耕作できる状態へ改良するのはなかなか困難です。
宅地でも、整地された元農地と、大規模な増勢が必要な耕作放棄地を比べた場合、取引価格も雲泥の差となります。

なお、耕作放棄地が生まれる原因と再生利用については、次回に記します。

耕作放棄地をどうするかについても、わからない場合は、当職においても相談を受け付けております。
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